キヤノン株式会社 企業分析 / 久我事務所

久我事務所 > ブログ > コラム > キヤノン株式会社 企業分析

キヤノン株式会社 企業分析

リモートワークが推奨され、オフィス複合機など利用が減っています。
コロナ禍の影響が心配されるキヤノン株式会社を分析してみました。

2011~2020年12月期までの10年間の連結財務諸表を分析しました。(2020年は決算短信)

企業力総合評価も各親指標も同じ傾向です。2016年12月期が凹んで、その後総じて失調です。2016年は東芝メディカルシステムズ㈱を買収した年です。

10年を俯瞰すれば、東芝メディカルシステムズ㈱の買収は、残念ながら成功とは言えません。

M&Aの買収額が高すぎた、東芝メディカルシステムズ㈱は、自社よりも企業力の低い会社だった、など考えられます。

検証すべく買収までの10年を見てみましょう。

キヤノン㈱は2016年12月期までの10年、東芝メディカルシステムズ㈱は2016年3月期までの5年を分析しています。2社比較の為、縦軸の数値は両社同じにしています。
(2020年3月期までの上のグラフは縦軸を変動軸にして、変化を感じやすくしています。)


グラフに答えは明確に表示されています。

キヤノン㈱は2016年までジワジワと儲からなくなってきました(営業効率)。そこが悩みどころ。流動性・安全性が良い為、買収余力があり、儲かる会社を探していたのでしょう。一方、東芝メディカルシステムズ㈱は、東芝本体の問題で揺れていている中、儲かっている会社なので、高く売れると処分に白羽の矢が立ったのでしょう。

企業力が低いとはいえ、営業効率が良い会社であったことから、企業選定には成功しています。なので買収価格が高すぎた可能性があります。

キヤノン㈱は、2007年以降、2016年にかけて、㈱アルゴ21、トッキ(株)、OPTOPOL Technology S.A.、Océ N.V.、Molecular Imprints, Inc.、Milestone Group A/S、Axis ABを買収し増収をさせてきました。それでも2007年売上高4兆4814億円・2016年3兆4015億円と、9年間で売上高が1兆799億円も減少しています。(東芝メディカルシステムズ㈱は2016年12月買収なので、2016年のキャノン㈱の連結売上高に含まれていません。)その中での営業効率(売上高利益率)が悪化しています。安全性もジワジワ悪化しています。

①既存ビジネスが儲からなくなった。②買収した会社の利益率が低かった。③買収によるコストが発生した。どれに該当するかは、開示された有価証券報告書からはデータは拾いきれませんが、キヤノン㈱は、自社のことですから分析は可能です。

この問題を解消しない放置したことが、東芝メディカルシステムズ㈱の買収の失敗につながったと考えられます。

資産ボリューム推移を見て下さい。資産総額が2010年からは増加トレンド、資産は未来の費用の貯蔵庫であることから、安全性・営業効率悪化も示唆します。余裕のある方は、資産区分(流動資産、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産)も考察して下さい。

まとめ

良くない意思決定は、確かにその時に行ったのでしょうが、そうするに至った遠因は遥か以前に始まっていることが多くあります。財務諸表を分析すると、普通は見過ごす問題点も抽出できます。

検索

カレンダー

2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

カテゴリー

最新記事

アーカイブ

当事務所が提供する基礎知識

  • 財務諸表

    財務諸表には「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」があります。 【貸借対照表】とは一時点におけ...

  • 財務指標とその比較・分析

    財務数値に基づく主な経営指標としては「収益性」・「安定性」・「成長性」などを思い浮かべることでしょう。 各々一...

  • 中小企業向けの資金調達方...

    中小企業の事業展開を行っていく際には、資金調達が必要になってきます。中小企業の資金調達には様々な方法があり、いくつかの方...

  • 経営のサポート

    規模の大小を問わず、企業トップ(経営者)をサポートする役割(本当の参謀役)が機能していないことが数多く見受けられます。&...

  • 財務・経営分析の必要性

    現在、「情報」の重要性が高いことは、事業経営者でなくとも誰もが理解していることでしょう。さまざまな情報が自由に手に入る今...

  • 総合的な企業分析

    企業(事業)の状態を知るためには様々な情報があります。一つは、「財務情報」 もう一つは、「非財務情報」 です。・・・ ど...

  • 中期経営計画とは?作り方...

    会社経営を行っていく際に必要になってくるものとして経営計画があります。そして、この経営計画の中でも中期経営計画は特に重要...

  • 財務諸表分析では何を見る...

    経営の状況を把握するためには財務諸表を見ることが重要になってきます。財務諸表とは「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュ...

  • 損益計算書の見方とは?ポ...

    経営を行う際には損益計算書などの財務諸表を用いて企業の経営分析を行うことがあります。その中でも損益計算書とは一体どのよう...

  • 飲食店における運転資金の...

    飲食店を経営するにあたっては運転資金をどのくらい用意しておけばいいのかということが重要になってきます。特にコロナウイルス...

よく検索されるキーワード

代表税理士紹介

  • 代表税理士
    久我 晴幸(くが はるゆき)
  • 所属団体
    東京税理士会
  • 経歴

    高等学校卒業後2年間、都内の病院に勤務

    昭和59年3月 病院を退職

    昭和59年4月 専門学校に入学し税理士資格を目指す。

    平成5年5月 東京税理士会 世田谷支部(事務所開設)

    平成6年4月 東京税理士会 渋谷支部に移転とともに独立

  • 業務経歴

    (1)税理士事務所 勤務

     税務会計業務(決算、申告業務ほか)

     不動産税務業務(マンション・アパート経営者に関する税務業務)

    (2)不動産鑑定事務所 勤務

     鑑定・調査業務(不動産の現地実査・法令調査から価格査定)

    (3)コンサルティング会社 勤務

     相続・事業承継の相談及び提案業務

     不動産等の活用相談及び提案業務

事務所概要

名称 久我事務所
所属 東京税理士会
代表者 久我 晴幸(くが はるゆき)
所在地 〒140-0011 東京都品川区東大井4-7-22-304
電話番号 03-6433-3232
対応時間 平日10:00~18:00
定休日 土・日・祝日
  • 国際会計基準IFRSコンソーシアム会員
  • 一般社団法人フードアカウンティング協会

ページトップへ