飲食店の経営権の譲渡|事業譲渡との違いは?
飲食店の経営を次の経営者に継承する方法は、株式譲渡による経営権の譲渡もしくは事業譲渡です。
事業継承を検討している経営者の中には、どちらが自社にふさわしい方法なのか知りたいという方がいらっしゃいます。
この記事では飲食店の経営権の譲渡と事業継承の違いについて解説します。
飲食店における経営権の譲渡の意味
まずは経営権の譲渡について説明しましょう。
経営権の譲渡とは、経営する権利を譲渡することです。
飲食店の経営権には、飲食店経営に必要な指揮・管理・決定をすることができる権利が含まれます。
経営に関わる重要な権利が行使できる状態にあれば、経営権を有しているとみなされます。
その状態を得るには一般的に議決権のある株式を一定割合以上保有していなければなりません。
したがって、飲食店の経営権の譲渡は、買手企業に株式すべてもしくは一部を譲渡することによりおこなわれます。
飲食店における事業譲渡の意味
次に事業譲渡の意味を説明しましょう。
事業譲渡とは、会社が営む事業のすべてもしくは一部を買い手企業に譲渡することです。
事業譲渡の対象になるものには会社が保有する事業資産が含まれます。
商品や設備、不動産などの有形のものはもちろん、ブランド、ノウハウ、顧客リスト、人材といった無形資産も事業譲渡の対象です。
飲食店の事業譲渡をする場合、事業譲渡の対象となるものそれぞれについて売却価格を設定する必要があるので、買手側との綿密な交渉が必要になります。
経営者が個人事業主の場合
飲食店の経営者が個人事業主の場合、株式会社ではないので事業継承の方法として株式譲渡による経営権の譲渡はできません。
したがって、事業譲渡を選択してください。
飲食店の経営権の譲渡と事業譲渡の違い
株式譲渡による経営権の譲渡と事業譲渡では以下の点で違いがあります。
- 譲渡するもの・対価の受け手
- 経営権の存続
- 手続きにかかる時間や手間
それぞれの違いについて具体的な内容を紹介しましょう。
譲渡するもの・対価の受け手・経営権の存続
飲食店の経営権の譲渡と事業譲渡では、譲渡あるいは売買の対象となるものが違います。
その違いは以下の通りです。
- 経営権の譲渡:会社の株式すべてあるいは一部を譲渡
- 事業譲渡:事業すべてあるいは一部を売買する
株式譲渡による経営権の譲渡と事業譲渡では、上記の違いがあるので、対価の受け手にも以下の違いが生まれます。
- 経営権の譲渡:譲渡対象となる飲食店の株主
- 事業譲渡:事業対象となる飲食店
事業譲渡では、事業のすべてではなく一部を譲渡することが可能です。
たとえば、飲食業に加えて、それ以外の事業をおこなっている企業であれば、飲食事業は譲渡せず、別事業のみを譲渡することできます。
さらに、事業譲渡で得た売却益を残しておいた飲食事業の資金に充てることが可能です。
経営権の存続
株式譲渡と事業譲渡では、譲渡対象となる飲食店の経営権存続の有無に違いがあります。
- 経営権の譲渡:経営権は存続しない
- 事業譲渡:事業対象となる飲食店:経営権は存続する
当然のこととして、株式譲渡で経営権を譲渡すれば、引き続き経営権を持つことはできません。しかし、事業譲渡は株式譲渡とは違うので、譲渡後も飲食店の経営には参加できます。
手続きにかかる時間や手間
一般的に、事業譲渡は、株式譲渡による経営権の譲渡より手続きに時間と手間がかかります。
飲食店経営に参加している株主が少数という場合、株式譲渡による経営権の譲渡を選ぶことができるでしょう。
さらに、株式譲渡と事業譲渡では、それにかかる税金の種類により金額にも違いがあるので、どちらがお得かを考えるには、専門的な知識が必要です。
株式譲渡による経営権の譲渡にするか、それとも事業譲渡にするか判断に悩んでいるなら、外部の専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
飲食店の事業継承方法として株式譲渡による経営権の譲渡と、事業譲渡の違いを紹介しました。
経営権の譲渡と事業譲渡では、譲渡の対象となるもの、譲渡後の経営権の存続の有無等に違いがあるので、事業継承の目的などに合わせてふさわしい方法を選ぶ必要があります。
事業継承の方法でお悩みがあるなら、経営コンサルティングや財務・経営分析の分野で専門的な知識と実績がある税理士事務所にぜひ相談してください。